株価チャートの下に表示される棒グラフが出来高です。
多くの投資家がなんとなく見ているだけのこの指標が、実はブレイクアウトの成否を見分ける最も重要な判断材料になります。
オニールは「出来高は株価の裏付けだ」と述べ、ミネルヴィニは「出来高のない動きは信用しない」と断言しています。
株価だけを見ていては、機関投資家が本気で買っているのか、一時的な動きで終わるのかを判断できません。
この記事では、出来高の基本的な読み方から、ブレイクアウトの本物とだましを見分ける具体的な方法まで、実践で使えるレベルで解説します。
この記事でわかること
- 出来高が株価分析で重要な理由
- 出来高チャートの基本的な読み方
- ブレイクアウトの本物とだましを見分ける5つのチェックポイント
- ベース形成中・上昇中・天井圏での出来高パターン
- 出来高で機関投資家の動きを読む方法
なぜ出来高が重要なのか
出来高(Volume)とは、ある期間に売買が成立した株数のことです。
株価が「方向」を示すのに対し、出来高は「その方向への確信度」を示します。
株価×出来高=市場の本音
株価と出来高の組み合わせは、4つのパターンに分類できます。
| 出来高 増加 | 出来高 減少 | |
|---|---|---|
| 株価 上昇 | 本物の上昇 買いの勢いが強い。機関投資家が参加している可能性 |
勢いのない上昇 参加者が少なく持続性に疑問 |
| 株価 下落 | 本物の下落 売り圧力が強い。投げ売りや利益確定の可能性 |
静かな調整 売り圧力が弱く、健全な押し目の可能性 |
最も重要な原則
「株価の動きは出来高で裏付けられて初めて信頼できる」
出来高が伴わない株価の動きは、少数の参加者による一時的なものであり、持続しない可能性が高いです。これが出来高分析のすべての土台となる考え方です。
出来高=機関投資家の"足跡"
個人投資家がいくら売買しても、出来高に目立った変化は起きません。
出来高が大きく増えるのは、投資信託、年金基金、ヘッジファンドなどの機関投資家がまとまった金額で売買したときです。
つまり、出来高の変化を読むということは、機関投資家が何をしているかを推測するということです。
- 出来高急増+株価上昇 → 機関投資家が買い集めている(アキュムレーション)
- 出来高急増+株価下落 → 機関投資家が売り抜けている(ディストリビューション)
- 出来高減少+株価横ばい → 機関投資家が様子見。方向感が出るまで待ち
📘 関連記事:機関投資家の売り抜け(ディストリビューション)の具体的な判定方法は「ディストリビューションとは?」で詳しく解説しています。
出来高チャートの基本的な読み方
出来高分析を実践するために、まず基本的な読み方を押さえましょう。
「平均出来高」を基準にする
出来高は絶対値ではなく、その銘柄の普段の出来高と比べてどうかで判断します。
トヨタの出来高100万株と、時価総額100億円の中小型株の出来高100万株では、意味がまったく異なります。
そのため、出来高分析では50日平均出来高を基準として使います。
| 出来高の水準 | 意味 | 判断 |
|---|---|---|
| 50日平均の1.5倍以上 | 通常より明らかに多い | 注目すべき動き。機関投資家の参加の可能性 |
| 50日平均の2倍以上 | 異常に多い | 強いシグナル。ブレイクアウト時であれば非常にポジティブ |
| 50日平均の0.5倍以下 | 通常より明らかに少ない | 参加者が枯れている。ベース形成中なら健全、ブレイク時なら要注意 |
「出来高の移動平均線」を表示する
多くのチャートツールでは、出来高にも移動平均線を重ねて表示できます。
出来高の50日移動平均線を表示しておくと、「今日の出来高が普段より多いか少ないか」を視覚的に即座に判断できます。
チャートの設定方法
証券会社のチャートツール(SBI証券、楽天証券、マネックス証券など)やTradingViewで、出来高エリアに移動平均線(50日)を追加してください。出来高の棒グラフがこの線を超えているかどうかが、一目で判断できるようになります。
ローソク足の色と出来高を合わせて見る
多くのチャートツールでは、陽線(上昇)の日は出来高バーが緑(または赤)、陰線(下落)の日は赤(または青)で色分けされます。
この色分けを使って、次のパターンを確認します。
- 陽線の日に出来高が多い日が続く → 買い圧力が強い(ポジティブ)
- 陰線の日に出来高が多い日が続く → 売り圧力が強い(ネガティブ)
ブレイクアウトの本物とだましを見分ける5つのチェックポイント
成長株投資の利益の大部分は、ベースからのブレイクアウトで得られます。
しかし、すべてのブレイクアウトが成功するわけではありません。
出来高を使って本物とだましを見分ける5つのチェックポイントを解説します。
チェック①:ブレイクアウト当日の出来高
最も重要なチェックポイントです。
✅ 本物のサイン
ブレイクアウト当日の出来高が、50日平均出来高の1.5倍以上に増加している。主導銘柄であれば2〜5倍、時には10倍に達することもある。
❌ だましのサイン
ブレイクアウト当日の出来高が平均以下、または平均と同程度。機関投資家が参加していない証拠であり、上昇が持続しない可能性が高い。
オニールの研究によれば、大化け株のブレイクアウト時には例外なく出来高が大幅に増加していたとされています。
出来高の伴わないブレイクアウトは、個人投資家だけの動きである可能性が高く、持続力がありません。
チェック②:ブレイクアウト前のベース内の出来高推移
ブレイクアウト当日だけでなく、その前の数週間〜数ヶ月の出来高推移も重要です。
✅ 本物のサイン
ベース形成中(横ばいや調整の期間)に出来高が徐々に減少している。特にベースの右側(終盤)で出来高が枯れてきている。
❌ だましのサイン
ベースの終盤でも出来高が高いまま、または大きな出来高を伴う下落(ディストリビューション)が発生している。
出来高の減少は売りたい人がいなくなったことを意味します。
売り圧力が枯渇した状態からのブレイクアウトは、少しの買い圧力でも株価を押し上げることができるため、成功率が高くなります。
イメージで理解する
水道の蛇口を想像してください。蛇口(売り圧力)が全開の状態で水を溜めようとしても溜まりません。蛇口がほぼ閉まった状態(出来高減少=売り圧力の枯渇)であれば、少しの水(買い注文)を入れるだけで水位(株価)は上がります。ブレイクアウトとは、この「蛇口が閉まった状態」から買いが入る瞬間なのです。
チェック③:ブレイクアウト後の数日間の出来高
ブレイクアウト当日だけでなく、その後2〜3日の出来高の推移も確認します。
✅ 本物のサイン
ブレイクアウト後、2〜3日間は出来高が平均を上回る水準を維持している。追随買いが継続している証拠。
❌ だましのサイン
ブレイクアウト翌日以降、すぐに出来高が平均以下に戻ってしまう。一時的なイベント(決算発表など)による一過性の動きの可能性あり。
チェック④:ブレイクアウト後の押し目の出来高
ブレイクアウト後に株価が一時的に下がる場面(押し目)は自然な現象です。
問題は、その押し目の出来高が大きいかどうかです。
✅ 本物のサイン
ブレイクアウト後の押し目で出来高が減少している。売り圧力が弱く、買い方が優勢を維持している。
❌ だましのサイン
ブレイクアウト後の押し目で出来高が急増している。機関投資家がブレイクアウトを利用して売り抜けた可能性。ブレイクアウトのピボットポイントを下回ったら損切りを実行する。
チェック⑤:出来高の「クライマックス」に注意
ブレイクアウト当日の出来高が大きいのは良いサインですが、異常すぎる出来高には注意が必要です。
⚠ 過剰な出来高の危険性
ブレイクアウト当日に過去数年で最大級の出来高が発生し、かつ株価がすでに長期間上昇した後(ステージ2後期)の場合、これは「買いのクライマックス」の可能性があります。最後に遅れた買いが殺到し、その後急落するパターンです。
区別のポイント:ステージ2初期の大出来高は強気のサイン。ステージ2後期(3回目以降のベース)の異常な大出来高は天井のサインの可能性あり。
5つのチェックポイントまとめ
| チェック項目 | 本物のサイン ✅ | だましのサイン ❌ |
|---|---|---|
| ①ブレイク当日の出来高 | 50日平均の1.5倍以上 | 平均以下〜同程度 |
| ②ベース内の出来高推移 | ベース右側で出来高が減少 | ベース終盤でも高いまま |
| ③ブレイク後2〜3日の出来高 | 平均を上回る水準を維持 | 翌日以降すぐに平均以下 |
| ④押し目の出来高 | 押し目で出来高が減少 | 押し目で出来高が急増 |
| ⑤異常な大出来高 | ステージ2初期の大出来高は強気 | ステージ2後期の異常出来高は天井の可能性 |
📘 関連記事:ベースパターンの具体的な形状と条件は「VCP(ボラティリティ収縮パターン)とは?」「カップウィズハンドルとは?」で解説しています。
場面別の出来高パターン|こんな出来高に注目する
ブレイクアウト以外の場面でも、出来高は重要な情報を提供してくれます。
投資判断に役立つ主要な出来高パターンを場面別に解説します。
パターン①:出来高を伴う大陽線(ポケットピボット)
上昇トレンド中に、出来高が直近10日間の下落日の最大出来高を上回る大陽線が出現するパターンです。
ベースからのブレイクアウトを待たずに、上昇トレンド中の追加買いポイントとして使えます。
条件:
- 当日が陽線(終値>始値)
- 当日の出来高が、直近10日間の下落日の出来高のうち最大のものを上回っている
- 株価が10日移動平均線または50日移動平均線の近くにいる(乖離していない)
このパターンは、ギル・モラレスとクリス・キャッチャーが提唱したもので、機関投資家が押し目で静かに買い増していることを示唆します。
パターン②:出来高の枯渇(ドライアップ)
ベース形成中や調整局面で、出来高が極端に少なくなる現象です。
これは、もうこの価格帯で売りたい人がほとんどいないことを示しています。
売り圧力の枯渇は、次のブレイクアウトが成功する可能性が高いことを示唆するポジティブなサインです。
確認方法:
- 出来高が50日平均の半分以下まで減少している日が数日続く
- 特にベースの右側(終盤)やハンドル部分での出来高枯渇が重要
📘 関連記事:VCPでは「ベース右側に向かって出来高が減少する」ことが必須条件とされています。詳しくは「VCP(ボラティリティ収縮パターン)とは?」を参照してください。
パターン③:出来高急増を伴う反転(リバーサル)
大幅に下落した後、同じ日または翌日に出来高急増を伴って反転上昇するパターンです。
これは、投げ売りが出尽くした(セリングクライマックス)可能性があります。
ただし、これだけで買い判断はせず、その後の値動きの確認が必要です。
注意点:
- ステージ2の銘柄の一時的な調整局面で出現した場合 → ポジティブ(押し目買いの候補)
- ステージ4の銘柄で出現した場合 → 単なる「デッドキャットバウンス」(一時的な反発)の可能性が高い。買いに飛びつかない
パターン④:出来高を伴う大陰線の連発(ディストリビューション)
上昇トレンド中に、出来高を伴う大きな下落が短期間に複数回発生するパターンです。
これは、機関投資家が利益確定して売り抜けている可能性があり注意が必要です。
ステージ2からステージ3への移行を示唆する危険なサインです。
具体的な基準:
- 出来高が前日より増加した状態で、株価が0.2%以上下落する日
- これが25営業日間に5回以上発生すると、市場環境の悪化を示唆
📘 関連記事:ディストリビューションの詳しい数え方と対応方法は「ディストリビューションとは?」で解説しています。当サイトでは日経平均のディストリビューション日数を毎日カウントして公開しています。
パターン⑤:出来高を伴わない新高値(弱い新高値)
株価が新高値を更新しているが、出来高が平均以下のパターンです。
これは、新高値の更新に買いの勢いが伴っていない、上昇が鈍化し始めているサインの可能性があります。
直ちに売りではありませんが、注意して見守るべき状況です。
特に注意すべき場面:
- 3回目以降のベースからのブレイクアウトで出来高が少ない場合 → ステージ3への移行の可能性が高い
- 何度も新高値を更新しているのに毎回出来高が減っている場合 → 買いの勢いが枯渇している
出来高分析の実践手順
ここまでの内容を、実際の投資判断に使える手順としてまとめます。
ブレイクアウト銘柄の買い判断フロー
1. ベース形成中の出来高推移を確認
ベースの右側に向かって出来高が減少しているか?
→ 減少している → ステップ2へ
→ 減少していない(高出来高の下落がある) → 見送り
2. ブレイクアウト当日の出来高を確認
50日平均出来高の1.5倍以上か?
→ 1.5倍以上 → ステップ3へ
→ 1.5倍未満 → 見送り(または翌日以降の出来高増加を待つ)
3. ステージとベース回数を確認
ステージ2初期(1〜2回目のベース)か?
→ 初期 → 買いを検討
→ 後期(3回目以降)で異常な大出来高 → 慎重に(クライマックスの可能性)
4. ブレイクアウト後2〜3日の出来高を監視
出来高が平均以上を維持しているか?
→ 維持 → 保有継続
→ 急減 → 警戒態勢に入る
5. 押し目の出来高を確認
押し目で出来高が減少しているか?
→ 減少 → 健全な調整。保有継続
→ 急増してピボットポイントを下回る → 損切りを実行
保有中の銘柄の売り判断に出来高を使う
以下のサインが複数出てきたら、利益確定(少なくとも一部売却)を検討します。
- 出来高を伴う大陰線が2〜3週間に複数回発生
- 新高値を更新しても出来高が前回の高値更新時より少ない
- 異常な大出来高(過去最大級)を伴う急騰の後に失速
- 50日移動平均線を出来高増加で下抜け
出来高分析でよくある間違い3選
間違い①:出来高の「絶対値」で判断してしまう
「出来高100万株だから多い」とは言えません。
トヨタなら少ない方ですし、小型株なら異常に多い水準です。
正しい見方:必ずその銘柄の50日平均出来高と比較してください。「普段の何倍か」が重要であり、絶対的な株数は意味がありません。
間違い②:出来高だけで売買を判断してしまう
出来高はあくまで「確認ツール」であり、単独で売買判断をするものではありません。
正しい使い方:
- まずステージ分析でステージ2の銘柄を選ぶ
- 業績(EPS・売上の成長)を確認する
- ベースパターン(VCPやカップウィズハンドル)を確認する
- 最後に出来高で「裏付け」を取る
出来高は、他の条件がすべて揃った上で「この判断は正しいか?」を確認するための最終チェック項目です。
間違い③:1日の出来高だけで判断してしまう
1日だけ出来高が大きくても、翌日以降に続かなければ一過性のイベントです。
正しい見方:出来高は数日〜数週間の「傾向」で判断します。1日の異常値ではなく、「上昇日に出来高が多い傾向がある」「下落日に出来高が少ない傾向がある」というパターンを読み取ることが重要です。
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まとめ
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 出来高の本質 | 株価の動きの「裏付け」。出来高が伴わない動きは信頼できない |
| 最重要基準 | ブレイクアウト当日に50日平均の1.5倍以上の出来高があるか |
| ベース中の理想 | ベース右側に向かって出来高が減少(売り圧力の枯渇) |
| 押し目の判断 | 押し目で出来高減少=健全。押し目で出来高急増=危険 |
| だましの回避 | 出来高を伴わないブレイクアウトは見送る勇気を持つ |
| 判断の基準 | 出来高の絶対値ではなく、50日平均出来高との比較で判断 |
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