投資戦略

EPSはなぜ増える?自社株買い・増資・株式分割の影響まとめ(希薄化も解説)

EPSが伸びている銘柄を見ると、「業績が伸びている=良い会社」と判断したくなりますよね。

ですが、ここに落とし穴があります。

 

EPSは純利益(分子)だけでなく、発行株式数(分母)の変化でも大きく動く指標です。

たとえば、自社株買いは株数を減らすことでEPSを押し上げ、逆に増資やストックオプション、転換社債(CB)などは株数が増える方向に働き、EPSを希薄化させます。

また、株式分割は見かけ上EPSが下がりますが、企業の実力が落ちたわけではありません。

 

この記事では、EPSが増える理由を「利益要因×株数要因」に分解し、数値例で腹落ちさせたうえで、最後に実務で使えるチェックリストまでまとめます。

 

結論:EPSが増えるルートは2つ。「利益↑」か「株数↓」かを必ず見分ける

EPSの基本はシンプルです。

EPS=当期純利益 ÷ 発行株式数(期中平均)

 

EPSが増えるルートは次の2つだけ。

  1. 純利益が増える(分子↑)

  2. 発行株式数が減る(分母↓:自社株買い・消却)

 

ここで重要なのは、利益が横ばいでもEPSが増えることがある点です。

たとえば、自社株買いで株数が減ると、同じ利益でも「1株あたりの取り分」が増えるため、EPSは上がります。

つまり、EPSの上昇を見たら「どっちのルートか」を最初に判定するのが鉄則です。

 

まず前提:EPSが動く仕組み(分子と分母)

EPSの式を分解して考える

EPSは「会社の利益」を「株主の取り分(1株あたり)」に変換した指標です。

  • 分子:当期純利益(実力+一時要因が混ざる)

  • 分母:発行株式数(増資・SO・CB・分割などで変わる)

 

分子が伸びたのか、分母が減ったのか。

ここを分けるだけで、EPSの質が見えやすくなります。

 

「期中平均株式数」が重要な理由

分母に使われるのは、単なる期末の株数ではなく「期中平均」であることが多いです。

期中に増資や新株予約権の行使があった場合、期末株数だけを見ても実態を誤解しやすいんですね。

この話は、後半の 希薄化後EPS(diluted EPS) にも自然につながります。

「将来株数が増える可能性」を織り込む発想が、希薄化後EPSです。

 

理由① 利益が増える(王道のEPS成長)

利益が増える代表パターン

王道のEPS成長は、当然ながら分子(利益)が増えるパターンです。

代表例は次の通りです。

  • 売上増(市場拡大・シェア拡大)

  • 利益率改善(値上げ・高付加価値化・コスト改善)

  • 構造改革(固定費圧縮・不採算撤退など)

 

このタイプは「事業が強くなっている」ことが多く、株価にも波及しやすい(ただしPER要因もある)という意味で、投資家が最も重視する成長です。

 

注意:特別利益でEPSが跳ねる(再現性がない)

一方で、利益が増えていても質が悪い場合があります。

典型が特別利益でEPSが跳ねるケースです。

この場合、翌年に同じ利益が出る保証がなく、EPS成長が「再現性のある成長」かどうかを見誤りやすいです。

 

チェックのコツはシンプルで、

  • 売上も伸びているか?

  • 営業利益や営業CFと整合しているか?

  • 一時要因(資産売却・補助金・会計上の特殊要因)ではないか?

 

参考記事: 「EPSとは?

 

理由② 自社株買い・消却でEPSが増える(分母が減る)

仕組み:同じ利益でも株数が減るとEPSは上がる

自社株買いは、分母(株数)を減らす力があります。分母が減ると、同じ利益でも1株あたりの取り分が増え、EPSは上がります。

  • 分母↓ → 1株あたり取り分↑ → EPS↑

 

数値例(滞在時間が伸びるパート)

  • 利益:10億円

  • 株数:1,000万株 → EPS=100円

 

ここで自社株買い・消却などで株数が減ったとします。

  • 株数:900万株 → EPS=111円(= 10億 ÷ 900万)

 

利益が同じでも、EPSは100円→111円へ上がります。

このため「EPSが伸びている」だけでは、利益成長なのか、株数要因なのかを判定できません。

 

落とし穴:EPS上昇=企業価値の増加、とは限らない

自社株買いはポジティブに語られがちですが、EPS上昇=企業価値増加と即断するのは危険です。

代表的な注意点は3つ。

  • 割高な株価で買い戻すと、株主価値を毀損する可能性

  • 成長投資を削って買い戻すと、将来の利益が弱くなる可能性

  • EPSだけ上がる見かけ改善になる可能性(事業が強くなっていない)

 

確認したいのは、キャッシュフローの余力や投資計画、そして「買い戻しの目的(株主還元か、資本効率か、防衛か)」です。

 

理由③ 増資・SO・CBでEPSが希薄化する(分母が増える)

仕組み:株数が増えるとEPSは薄まる

増資や新株発行は、分母(株数)を増やします。すると、同じ利益でも1株あたりの取り分が小さくなり、EPSは下がります。

  • 増資で株数↑ → EPS↓(希薄化)

 

SO(ストックオプション)やCB(転換社債)も、最終的に株式へ転換されれば株数が増える可能性があり、同様に希薄化要因になり得ます。

 

希薄化が「悪」とは限らない(成長投資のため)

ただし希薄化は「悪」と決めつけるのも危険です。増資は資金調達の手段であり、

  • 調達 → 成長投資 → 将来利益↑

 

につながるなら、将来EPSの増加で回収できる場合があります。

希薄化を見たら、次をセットで見るのが実務的です。

  • 資金の使い道は明確か?(投資の中身)

  • 利益が増える道筋があるか?(KPI・ガイダンス・実績)

  • 増えた株数を吸収できるだけの利益成長が見込めるか?

 

希薄化後EPS(diluted EPS)をどう扱う?

希薄化後EPSは、「将来株数が増える可能性(潜在株式)」を織り込んでEPSを考える発想です。

  • 潜在株式の例:ストックオプション、転換社債、新株予約権など

  • ポイント:いつ・どれくらい株数が増え得るかを把握する

 

普段のスクリーニングでは、まず基本EPSで十分なことも多いですが、SOやCBが大きい会社は「希薄化後」の視点を持つだけで判断ミスが減ります。

 

理由④ 株式分割はEPSが下がる。でも実力が落ちたわけではない

株式分割で起きる「見かけの変化」

株式分割は、株数が増えるため、EPSは小さく見えます。

ただしこれは「1株あたり」という単位が変わるだけで、企業の稼ぐ力そのものが落ちたわけではありません。

 

実質価値が変わりにくい理由(直感)

たとえば 1:2分割なら、

  • 株数:2倍

  • EPS:半分

になります。

 

ですが、投資家側の保有株数も2倍になるので、基本的に経済価値は中立です。

分割の目的は、投資単位を下げて買いやすくする、流動性を高める、といった実務上の狙いが中心です。

 

実務チェックリスト(EPSが増えた時の確認順)

① 分子:利益は継続的に増えている?

  • 売上は伸びているか

  • 利益率は改善しているか

  • 特別損益で膨らんでいないか(再現性はあるか)

 

② 分母:株数は減っている?増えている?

  • 自社株買い/消却(分母↓)

  • 増資/潜在株式(分母↑:希薄化)

  • 株式分割(見かけ)

→ EPS上昇が「利益要因」なのか「株数要因」なのか、ここで判定します。

 

③ 最後に株価へ接続:株価=PER×EPSで説明できる?

EPSが伸びているのに株価が弱い場合、PER(評価倍率)が下がっている可能性があります。

「EPS(企業側)」だけでなく「PER(市場側)」も含めて説明できると、判断の再現性が上がります。

関連記事: 「株価は「PER × EPS」で決まる

 

まとめ:EPS成長は「利益」と「株数」の合成。見かけに騙されない

  • EPSは分子(利益)と分母(株数)の両方で動く

  • 自社株買いはEPSを押し上げるが、成長とは限らない(見かけ改善の可能性)

  • 希薄化は悪と決めつけず、資金使途と将来利益で判断する

 

合わせて読みたい記事

株価は「PER × EPS」で決まる

EPSとは?

PERとは?

 

FAQ

自社株買いでEPSが増えるのはなぜ?

発行株式数(分母)が減り、同じ利益でも「1株あたりの取り分」が増えるからです。

利益が横ばいでもEPSが上がることがあります。

 

EPSが増えたのに株価が上がらないのはなぜ?

評価(PER)が下がっている可能性があります。

株価は「PER×EPS」なので、EPS↑でもPER↓なら株価が伸びないことがあります。

関連記事: 「株価は「PER × EPS」で決まる

 

希薄化はどこを見れば分かる?

発行済株式数の推移、増資の有無、SO/CBなど潜在株式の情報、そして(開示されていれば)希薄化後EPSの考え方が参考になります。

 

株式分割でEPSが下がったけど悪材料?

多くの場合、単位が変わっただけで企業の実力が落ちたわけではありません。

1株あたりが小さく見えるだけです。

 

増資でEPSが下がるのに、なぜ良い場合があるの?

調達資金が成長投資に使われ、将来の利益が大きく伸びれば、将来EPSで希薄化分を回収できる可能性があるからです。

資金使途と利益の道筋が鍵です。

 

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