本記事では、「ディストリビューション」について解説します。
「ディストリビューション」は「売り抜け」とも言われ、株価の下落・暴落あるいはトレンド転換のサインとして利用することができます。
成長株投資法で著名なウィリアム・J・オニールの著書「オニールの成長株発掘法」で紹介されている分析手法です。
「ディストリビューション」を日々チェックしておけば、株価の下落・暴落・トレンド転換を事前に察知することができ、大事な資金を守ることができます。
結論、4〜5週間で明確な売り抜けが3〜5日があると注意が必要です。
「ディストリビューション」 の定義
まずは「ディストリビューション」の定義について解説します。
「ディストリビューション(売り抜け)」とは、出来高を伴った株価の下落で、次の条件を満たした場合のことを指します。
ディストリビューションの定義
- 当日の終値が前日の終値より低い
- 当日の出来高が前日の出来高よりも大きい
これら2つの条件を満たしている場合に、「ディストリビューション」つまり「売り抜け」が発生したと判断されます。
「ディストリビューション」が発生したら株価の下落やトレンド転換のサインになる場合があるので注意が必要です。
「ディストリビューション」 が発生すると何が起こっているのか?
次に「ディストリビューション」が発生することの意味について見ていきます。
「ディストリビューション」が発生すると、株価が下落しているのに出来高が増加していることになります。
大きな売り越しが発生している
これは買いよりも売りが多い状況で、売り圧力が発生したと言えます。
特に天井圏で「ディストリビューション」が発生すると、機関投資家が静かに売りに出して個人投資家が知れずして買っているといったような状況になります。
このような状況が頻発すると、株価下落・暴落の引き金になる可能性があります。
株価チャートは4つのステージから成る
成長株投資で著名な投資家であるマーク・ミネルヴィニによれば、株価チャートは4つのステージに分けられます。
- 第1ステージ(底固め局面)
- 第2ステージ(上昇局面)
- 第3ステージ(天井圏)
- 第4ステージ(下落局面)
「ミネルヴィニの成長株投資法」より
基本的には、第1ステージから第4ステージまで順に推移して、その後は第1ステージに戻ってこれを繰り返します。
ポイントは「第2ステージ(上昇局面)」と「 第3ステージ(天井圏)」
「ディストリビューション」を注意深くチェックしなければならないのは、この4つのステージで言うところの「第2ステージ(上昇局面)」と「 第3ステージ(天井圏)」です。
- 「第2ステージ(上昇局面)」と「 第3ステージ(天井圏)」で「ディストリビューション」が発生したら要注意
- 「第1ステージ(底固め局面)」あるいは「第4ステージ(下落局面)」でディストリビューション」が発生してもそこまで気にする必要はない
「ディストリビューション」の発生は、「第2ステージ(上昇局面)」から「 第3ステージ(天井圏)」、あるいは「 第3ステージ(天井圏)」から 「第4ステージ(下落局面)」へステージが切り替わるタイミングとなることがあります。
「第1ステージ(底固め局面)」あるいは「第4ステージ(下落局面)」にいる場合は、基本的には投資すべきタイミングではないので「ディストリビューション」が発生してもそこまで気にする必要はありません。
「第4ステージ(下落局面)」では「ディストリビューション」が頻発します。
株価が上昇してるタイミング(第2ステージ)、あるいは高値圏でレンジ相場を形成している際(第3ステージ)に「ディストリビューション」が出現したら下落の可能性があるためその後の株価動向を注意して見ていく必要があります。
【下落・トレンド転換のサイン】「ディストリビューション」 が頻発したら要注意!
「第2ステージ(上昇局面)」「 第3ステージ(天井圏)」で「ディストリビューション」が頻発したら株価下落・暴落あるいはトレンド転換のサインになる可能性があります。
ウィリアム・J・オニールは「オニールの成長株発掘法」で次のようにおっしゃっています。
天井を打つ直前での大量売りは、通常なら4〜5週間に3〜5日起こる。つまり売り抜けは、市場がまだ上昇中に起こるのだ!これこそが、売り抜けを見極められる投資家が極端に少ない理由の一つである。4〜5週間で明確な売り抜けが3〜5日あると、その後の市場全体はほぼ必ず下落を始める。
「オニールの成長株発掘法」より
「ディストリビューション」が頻発したら危ない
「ディストリビューション」が1回発生した場合はあまり気にする必要はありません。
しかし、これが頻発すると注意が必要になってきます。
過去の相場を見ても、ITバブル崩壊、リーマンショック、コロナショックなど、大きな暴落の前には必ずといっていいほどこの「ディストリビューション」が頻発しています。
このように、短期間に「ディストリビューション」がなんども発生するような状況ではより一層の注意が必要です。
もしこの状況が発生した場合には、一部は株を売却して現金比率を高めるなどして、もしもの事態に備えておくと安心です。
「明確な売り抜け」とは?
ただ、ここで一つ疑問が生じます。
先ほどのウィリアム・J・オニールさんの言葉にあった「明確な売り抜け」とはどのような条件を指すのでしょうか?
これに対して、「オニールの成長株発掘法」の中で次のように言っています。
売り抜けが繰り返しあったかどうかは、1つの指数で確認できれば十分である。4〜5日の売り抜けを複数の主要な指数で確認する必要はない。また、ある指数で前日の出来高より増加したのに株価は下げて引けたことが示されたなら、その下落率が0.2%以上であれば「売り抜け」として数えてよいとする。
「オニールの成長株発掘法」より
定義に沿ったディストリビューション(前日よりも終値が低くて出来高が増加する)は、わりとよく発生します。
これに「下落率が0.2%以上」という条件を加えると、発生頻度は多少減りますが、それでもわりと発生する印象です。
個人的には、明確なディストリビューションというにはもう少し条件を絞りたいところです。
「オニールの成長株発掘法」では、下落率について0.2%以上と言及されていますが、出来高については前日よりも増加してればOKと言っています。
ただ、これだと出来高が極端に少ない期間でも、前日よりも出来高が増加していれば「ディストリビューション」の要件を満たすことになってしまいます。
出来高についてもある程度のボリュームがないとインパクトのある「ディストリビューション」とは言えません。
本サイトの「ディストリビューション」の定義
本サイトでは、ここを少し工夫して、「出来高が過去4週間の平均よりも高い」という条件を追加してディストリビューションを定義していこうと思います。
4週間という数字は、オニールさんが「ディストリビューション」の発生期間として4〜5週間の期間を見ているので、これに合わせました。
つまり、本サイトにおける「ディストリビューション」の定義は以下のようになります。
本サイトのディストリビューションの定義
- 当日の終値が前日の終値より低い
- 当日の出来高が前日の出来高よりも大きい
- 株価下落率が0.2%以上
- 出来高が過去4週間の平均値よりも大きい
これらの条件を全て満たした場合に、「明確な売り抜け」つまり「ディストリビューション」として判断します。
市場動向を把握するには主要株価指数を毎日チェックすべし!
ここまでで「ディストリビューション」についてお分かりいただけたではないかと思います。
次に考えるべきことは、市場動向を判断するにはどの銘柄をチェックするべきか、ということです。
これに対しても、オニールが「オニールの成長株発掘法」の中で答えを教えてくれています。
マーケットの天井を見極めるには、S&P500やNYSE総合株価指数、ダウ工業株30種平均、ナスダック総合指数などの指数が上昇していくのを毎日注意深く観察することから始まる。
「オニールの成長株発掘法」より
「オニールの成長株発掘法」は、アメリカ株への投資を前提としている本なので、ここではアメリカ市場の主要株価指数が挙げられています。
基本的には、市場全体の動きを示す主要株価指数の動きをチェックしておけばマーケット全体の動向を把握することができます。
日本市場の場合だと、日経平均株価やTOPIXなどが該当します。
また、個別株の「ディストリビューション」をチェックすることも有効です。
日本の主要株価指数の「ディストリビューション」を監視します!
最後にお知らせです。
本サイトでは日本の主要株価指数の「ディストリビューション」を毎日チェックしています。
監視対象としている株価指数は以下の通りです。
ディストリビューションをチェックしている株価指数
- 日経平均株価
- TOPIX
ディストリビューションが発生したら、Xで自動発信します。
また、こちらの記事で最新の情報がローソク足チャートで確認できます。
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主要株価指数の「ディストリビューション」
続きを見る
まとめ
本記事では、「ディストリビューション」について解説しました。
「ディストリビューション」を活用すれば、株価の下落・暴落やトレンド転換を事前に察知することができます。
事前に察知することができれば、一部を現金化するなり、通常時よりも株価動向をこまめにチェックするなり、少し警戒モードに切り替えて安全対策を打つことができます。
是非とも「ディストリビューション」を活用して大切な資金を守りましょう!
そのために、本サイトや僕のXアカウントを活用いただけると嬉しいです。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。