投資戦略

株の損切りルール|成長株投資で資金を守る実践的な方法

損切りが大事なのはわかっているけど、いざとなるとできない。

これは多くの投資家が抱える悩みです。

 

損切りが難しい理由は明確で、人間の脳は「損失を確定すること」に強い苦痛を感じるようにできているからです(プロスペクト理論)。

「もう少し待てば戻るかもしれない」という期待は、本能的な反応であり、意志の弱さとは関係ありません。

だからこそ、感情ではなくルールで損切りを管理する必要があります。

 

本記事では、成長株投資の世界的権威であるオニールとミネルヴィニが実践する損切りルールを紹介し、 日本株で具体的にどう使うかを解説します。

 

結論:成長株投資の損切りルール

ポイント

買値から7〜8%下落したら、理由を問わず売却する。
これがオニールの損切りルールであり、成長株投資における最も基本的な防衛ラインです。

このルールが機能する理由は、成長株投資が「1勝4敗でも利益が残る」構造になっているからです。

【損切り8% × 4回の負け = −32%】
【利確25% × 1回の勝ち = +25%】
→ 合計 −7%? ……と思いきや、勝ちトレードでは25%以上伸びることが多いため、
大化け株を1つ掴めば、複数回の小さな損切りを大きく上回るリターンが得られます。

 

損切りの目的は「損失をゼロにすること」ではなく、 1回の大きな損失で資金を壊滅的に減らすことを防ぐことです。

 

なぜ「7〜8%」なのか? オニールの損切りルール

ウィリアム・オニールは著書『オニールの成長株発掘法』の中で、「適切なタイミング(ピボットポイント)で買った銘柄が8%以上下落することは稀であり、 8%下がった時点でエントリー判断が間違っていた可能性が高い」と述べています。

 

7〜8%の根拠

根拠 説明
ピボットポイントからの許容誤差 正しい買いポイント(チャートパターンのブレイク地点)で買った場合、通常の揺れは5%以内に収まる。8%を超えるのはブレイクが失敗した(だまし)サイン
損失の非対称性 8%の損失を取り戻すには約8.7%の上昇で済む。しかし、50%の損失を取り戻すには100%の上昇が必要。損失は小さいうちに切るほど回復が容易
100年のデータ オニールが分析した過去の大化け株の大半は、正しい買いポイントから8%以上下落す

 

損失の非対称性を理解する

損失率 取り戻すために必要な上昇率 難易度
−5% +5.3% 容易
−8% +8.7% まだ現実的
−10% +11.1% やや負担
−20% +25.0% かなり厳しい
−33% +50.0% 非常に困難
−50% +100.0% ほぼ不可能

 

この表を見れば、損失が大きくなるほど取り戻すのが指数関数的に難しくなることがわかります。

損切りの本質は、損失が取り戻せない領域に入る前に退出することです。

📎 参考記事: オニールの投資法の全体像 → CAN-SLIM投資法とは?
📎 参考記事: オニール本のレビュー → 『オニールの成長株発掘法』要約と感想

 

ミネルヴィニ流:リスク/リワード計算による損切り

マーク・ミネルヴィニは、オニールの7〜8%ルールをさらに進化させ、 エントリーの時点でリスク/リワード比を計算し、損切り幅を事前に設計する方法を提唱しています。

 

リスク/リワード比の考え方

ミネルヴィニの損切りは「買値から何%」ではなく、 チャートパターン(VCPなど)の安値を基準にします。

【例】
・エントリー価格:1,000円(ピボットポイント)
・VCPの直近安値:960円(=損切りライン)
・リスク:1,000円 − 960円 = 40円(4%)
・利確目標:1,200円(20%上昇)
・リワード:1,200円 − 1,000円 = 200円(20%)

リスク/リワード比 = 4% : 20% = 1 : 5
→ 十分に有利なトレード。エントリーOK。

 

ミネルヴィニは、リスク/リワード比が最低3:1以上になるポイントだけでエントリーすることを推奨しています。

これにより、損切り幅を5%以内に抑えつつ、リターンの期待値を最大化できます。

 

オニール式とミネルヴィニ式の比較

観点 オニール式 ミネルヴィニ式
損切りライン 買値から一律7〜8% チャートパターンの安値を基準に個別設定
計算の手間 不要。シンプル エントリー前にR/R計算が必要
損切り幅 常に7〜8% 3〜8%(チャート形状による)
向いている人 初心者(迷いなく実行できる) 中級者以上(チャート分析ができる)

ポイント

おすすめの順序:まずオニール式の7〜8%ルールで損切りの習慣をつけ、 チャート分析に慣れてきたらミネルヴィニ式のR/R計算に移行する。

 

📎 参考記事:  VCPパターンの詳細 → VCP(ボラティリティ収縮パターン)とは?
📎 参考記事:  ミネルヴィニ本のレビュー → 『ミネルヴィニの成長株投資法』要約と感想
📎 参考記事:  2つの手法の比較 → オニール vs ミネルヴィニ

 

損切りできない人が陥る5つのパターンと対策

パターン1:「もう少し待てば戻るはず」(希望バイアス)

最も多いパターンです。人間の脳は損失を確定することに強い苦痛を感じるため、 「待てば戻る」という根拠のない期待にすがります。

対策:損切りラインに達したら「自分の判断が間違っていた」と認めるのではなく、 「ルール通りに行動できた自分は正しい」と捉える。 損切りは失敗ではなく、リスク管理が機能している証拠です。

 

パターン2:「損切りラインを後から変える」(ルール崩壊)

「8%で切る」と決めていたのに、実際に8%下がると「10%にしよう」「15%まで待とう」と変更してしまうパターンです。

対策:エントリーと同時に逆指値注文を入れる。 システムに任せることで、感情が介入する余地をなくします。

 

パターン3:「買値に戻ったら売ろう」(アンカリング)

損失を抱えた状態で「買値まで戻ったら売る」と決めてしまうパターンです。

これは投資判断ではなく、心理的な執着です。 買値はあなた個人の事情であり、市場には関係ありません。

対策:保有中の銘柄を「今日、この価格で新規に買うか?」と自問する。 答えがNoなら、買値に関係なく売却すべきです。

 

パターン4:「ナンピンで平均取得価格を下げよう」

下がった銘柄を買い増して平均単価を下げようとするパターンです。

成長株投資においてナンピンは最も危険な行為の1つです。

株価が下がっている=市場がその銘柄を評価していない証拠であり、 下がり続ける銘柄に資金を追加投入するのは傷口を広げる行為です。

対策:成長株投資では「下がった株を買い増す」のではなく、 「上がっている株に資金を集中する」のが正しい方向です。

 

注意: ミネルヴィニは第4ステージ(下落局面)の銘柄を買うことを「falling knife(落ちるナイフ)を掴む」と表現し、最もやってはいけない行為として警告しています。

 

パターン5:「損切りした直後に上がって悔しい」(結果バイアス)

損切り後に株価が反発すると「切らなければよかった」と感じます。

しかし、これは結果論です。

損切り時点では上がるか下がるかわかりません。

対策:10回の損切りのうち、仮に3回が「切らなくてよかった」ケースだったとしても、 残りの7回は損切りが正解だったはずです。 損切りの正しさは1回の結果ではなく、100回の統計で評価してください。

 

損切りルールの実践手順

手順1:エントリー前に損切りラインを決める

買う前に「この価格まで下がったら売る」を決めます。

買った後に決めると感情が入るため、必ず買う前に設定してください。

方法 損切りラインの設定
オニール式(初心者向け) 買値 × 0.92 〜 0.93(7〜8%下)
ミネルヴィニ式(中級者向け) VCPやカップウィズハンドルの直近安値の少し下

 

手順2:エントリーと同時に逆指値注文を入れる

注文が約定したら、すぐに損切りラインに逆指値注文を設定します。

これにより、感情に関係なく自動で損切りが執行されます。

 

手順3:損切り後の行動を決めておく

損切り後にやるべきことは以下の3つです。

  1. すぐに次の銘柄を探さない:「取り返そう」という焦りは判断を歪める
  2. なぜ損切りになったか振り返る:エントリーのタイミングが早かった?出来高が足りなかった?地合いが悪かった?
  3. 次のチャンスを待つ:成長株投資はチャンスが何度もやってくる。1回の損切りで焦る必要はない

 

損切りと相場環境の関係

損切りの頻度が急に増えたと感じたら、それはあなたの判断が悪いのではなく、相場全体が悪化している可能性が高いです。

オニールは「3〜4回連続で損切りになったら、新規の買いを止めて現金比率を上げろ」と述べています。

相場全体が弱気に転換しているのに買い続けるのは、逆風の中で走るようなものです。

 

相場全体の健全性を判断するには、ディストリビューション(売り抜け)日数を確認してください。

ディストリビューション日数が積み上がっている局面では、どんなに良い銘柄でもブレイクが失敗しやすくなります。

 

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📎 参考記事:  ディストリビューション(売り抜け)とは?

 

損切りの精度を上げる:買いの精度を上げる

損切り回数を減らす最善の方法は、損切りルールを緩めることではなく、エントリーの精度を上げることです。

正しいタイミングで買えば、そもそも損切りラインに達する確率が大幅に下がります。

 

エントリー精度を上げる3つのチェック

チェック 確認すること 使えるデータ
①業績の裏付け EPS/売上が前年同期比20%以上成長しているか オニール銘柄一覧(無料)
②上昇トレンドにあるか トレンドテンプレートを通過しているか ミネルヴィニ銘柄一覧(無料)
③相場の地合いは良いか ディストリビューション日数が少ないか ディストリビューション状況(無料)

 

この3つのチェックを通過した銘柄だけをエントリー候補にすれば、 損切りになる確率自体を大幅に減らすことができます。

 

📎 参考記事:  成長株の見つけ方|日本株スクリーニング完全ガイド
📎 参考記事:  新高値ブレイク投資のやり方

 

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よくある質問(FAQ)

Q. 損切りは何パーセントが正解?

投資スタイルによりますが、成長株投資では7〜8%が世界的に最も支持されている基準です。

短期トレードなら3〜5%、長期投資なら10〜15%が目安とされることもありますが、 成長株投資では「正しい買いポイントからの距離」で考えるため、7〜8%が合理的です。

 

Q. 含み損を抱えている銘柄は今から損切りすべき?

「今日、この銘柄をこの価格で新規に買うか?」と自問してください。

答えがNoなら、損切り(または損切りに近い価格での売却)を検討すべきです。

買値は過去の話であり、今後の株価には関係ありません。

 

Q. 損切り後にすぐ買い直してもいい?

同じ銘柄を損切り直後に買い直すのは避けてください。

損切りになった理由(ブレイクの失敗、地合いの悪化など)が解消されていない可能性があります。

もし本当に良い銘柄なら、新たなベース形成を経て再びブレイクしたときに改めてエントリーすればいいのです。

 

Q. 成長株投資で損切りが多すぎる場合はどうすべき?

連続して3〜4回損切りが発生したら、以下を確認してください。

  1. 相場全体の地合いが悪くないかディストリビューション状況を確認)
  2. エントリーのタイミングが早すぎないか(ブレイクを確認する前に買っていないか)
  3. 出来高を確認しているか(出来高を伴わないブレイクは失敗しやすい)

 

損切りが多い=手法が悪いのではなく、エントリーの条件が甘い相場環境が悪いのが原因であることがほとんどです。

 

Q. 長期投資でも損切りは必要?

長期投資でも損切りは必要です。

ただし、成長株投資とは損切り幅や判断基準が異なります。

長期投資では「業績の前提が崩れた場合」に損切りするのが一般的で、 株価の下落率だけで判断するわけではありません。

本記事で紹介している7〜8%ルールは、成長株投資(中短期)向けのルールです。

 

まとめ

損切りは投資の「コスト」ではなく、資金を守るための保険です。

  1. オニール式7〜8%ルール:シンプルで初心者にも実行しやすい。まずはここから
  2. ミネルヴィニ式R/R計算:チャート分析ができる中級者向け。損切り幅をさらに絞れる
  3. 逆指値注文を活用して、感情に関係なく自動で損切りを執行する
  4. 損切り回数が多い場合は、相場環境の確認とエントリー精度の見直しが先

 

損切りルールを守れるようになると、「いくら負けても致命傷にならない」という安心感が生まれ、 むしろ積極的にチャンスを取りに行けるようになります。

成長株投資で利益を出すための第一歩は、まず損切りのルールを決めて、それを守ることです。

 

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