投資戦略

カップウィズハンドルとは?条件・見つけ方・エントリー方法を図解で解説

カップウィズハンドル(Cup with Handle)は、ウィリアム・J・オニールがCAN-SLIM投資法で最も重要視するチャートパターンです。

日本語では「取っ手付きカップ」とも呼ばれ、コーヒーカップを横から見たような形をしていることが名前の由来です。

 

著書「オニールの成長株発掘法」では最初の100ページ以上がチャート分析に充てられており、その中心にあるのがこのカップウィズハンドルです。

過去の大化け銘柄の多くが、急騰する直前にこのパターンを形成していたことがオニールの研究で明らかになっています。

 

本記事では、カップウィズハンドルの条件を一つひとつ解説し、ピボットポイント(買いポイント)の見極め方、失敗パターンの回避法、そして日本株で効率的にカップウィズハンドルを見つける方法までを網羅的にお伝えします。

 

カップウィズハンドルとは|成長株投資の最重要チャートパターン

カップウィズハンドルは、株価が一旦下落した後にU字型に回復し(=カップ部分)、高値圏で小さく調整した後に(=取っ手部分)、出来高を伴ってブレイクアウトするパターンです。

 

このパターンが重要な理由は、機関投資家の行動原理と密接に結びついているからです。

カップの下落局面では、短期の投機家や弱気の株主が振い落とされます。

U字型の底で売りが枯渇し、機関投資家が静かに買い集めを行います。

取っ手部分でさらに最後の振い落としが起こり、残った株主は簡単には売らない強固な保有者ばかりになります。

 

この「売り圧力の枯渇」と「強固な株主基盤の形成」が完了した時点で、出来高を伴ったブレイクアウトが起こり、これがカップウィズハンドルのピボットポイント(最適なエントリーポイント)です。

 

カップウィズハンドルの条件一覧

カップウィズハンドルの条件は細かく定義されています。まずは全体像を把握するために一覧表で整理します。

部位 条件 数値目安
カップ 形成期間 7〜65週間(一般的には3〜6ヶ月)
  カップの深さ(高値→安値の調整幅) 12〜33%
  カップの底の形状 V字よりU字型が望ましい
  ベース形成前の上昇トレンド 最低30%以上の上昇
取っ手 形成期間 1〜2週間以上
  位置 カップ全体の上半分 & 10週移動平均線の上
  下落幅 8〜12%以内(強気相場の場合)
  出来高 薄商いが望ましい
ピボットポイント 位置 取っ手部分の高値(カップの高値より5〜10%低いことが多い)
  ブレイク時の出来高 平均の1.5倍以上(理想は2倍〜5倍以上)

 

以下、各条件を詳しく解説します。

 

カップ部分の条件

形成期間は7〜65週間

カップウィズハンドルの形成には最低7週間が必要です。

一般的には3〜6ヶ月程度で形成されますが、長い場合は65週間(1年以上)かかることもあります。

期間が短すぎるパターンは、十分な調整(振い落とし)が行われていないため、ブレイク後に失敗する確率が高くなります。

 

カップの深さは12〜33%

カップの頂点から底までの調整幅は12〜33%が目安です。

ここで注意すべきは、深すぎるカップは危険だという点です。

仮に50%の下落があった場合、元の高値に戻るためには100%の上昇が必要になります。

オニールの研究では、こうした深すぎるカップからブレイクアウトした銘柄は、5〜15%上昇した地点で反落する傾向があるとされています。

 

カップの底はU字型がよい

鋭いV字型ではなく、丸みを帯びたU字型が望ましいとされています。

U字型の底は、2〜3回の小幅な下落を経て投機家が離れ、強固な株主基盤が形成されたことを示します。

V字型の場合は調整が不十分で、ブレイク後の上昇力が弱くなりがちです。

 

ベース形成前に30%以上の上昇トレンドがある

どんなチャートパターンにも共通する前提条件として、ベース形成前に明確な上昇トレンドが必要です。

株価が最低でも30%上昇した後にカップを形成しているかどうかを確認します。

同時に、上昇局面でレラティブストレングスが改善していたか、出来高が増加していたかもチェックポイントです。

 

→ レラティブストレングスの計算方法と日本株での使い方はこちら

 

取っ手(ハンドル)部分の条件

期間は1〜2週間以上

取っ手部分は一般的に1〜2週間以上かけて形成されます。

この期間中に最後の弱気な保有者が振い落とされます。

ただし、値動きの激しいハイテク銘柄では取っ手が形成されずにそのままブレイクアウトするケースもあります。

 

カップの上半分かつ10週移動平均線の上に位置する

取っ手がカップ全体の下半分に形成されたり、10週移動平均線(日足なら50日移動平均線)より下に位置したりする場合は、需要が不十分である証拠です。

このパターンはブレイクに失敗する確率が高くなります。

 

下落幅は8〜12%以内

強気相場では、取っ手の下落幅は8〜12%以内が適切とされています。

下がりすぎるのは売り圧力が強すぎるサインであり、逆に下がらずに真横に動く場合は十分な振い落としが行われていないサインです。

どちらもブレイク後の失敗につながりやすいパターンです。

 

出来高は薄商いであること

取っ手部分では出来高が減少していることが理想です。

これは、売りたい人がほぼいなくなった(=売り圧力が枯渇した)ことを示しています。

 

ピボットポイント(買いポイント)の見極め方

カップウィズハンドルにおけるピボットポイントとは、取っ手部分の高値のことです。

株価がこの水準を出来高を伴って上抜けた瞬間が、エントリーのタイミングです。

 

重要なのは、ピボットポイントは必ずしもカップの高値(=過去の高値)ではないという点です。

多くの場合、ピボットポイントはカップの高値より5〜10%低い位置に形成されます。

 

高値更新を待っていると手遅れになる可能性があるため、取っ手部分の動きを注意深く監視する必要があります。

52週高値を更新するブレイクアウトの全体像は「新高値ブレイク投資のやり方」で実践手順を解説しています。

 

ブレイク時の出来高増加が必須

ピボットポイントを突破する際に、出来高が通常の1.5倍以上に増加していることが条件です。

 

主導銘柄の場合は平均出来高の2〜5倍、時には10倍に達することもあります。

この出来高の急増は、機関投資家の本格的な買いが入ったことを示すシグナルです。

 

出来高を伴わないブレイクアウトは「だまし」の可能性が高く、エントリーを見送るべきです。

 

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損切りラインは買い値から7〜8%

どれほど完璧なカップウィズハンドルを見つけても、損切りラインの設定は必須です。

オニールはピボットポイントの買い値から7〜8%下落したら機械的に損切りするルールを徹底しています。

 

適切なピボットポイントでエントリーすることは、この損切りルールに引っかかるリスクを最小化するためでもあります。

エントリーが遅れれば遅れるほど、損切りラインまでの距離が縮まり、ちょっとした調整で振り落とされる確率が高くなります。

損切りの心理的な壁の乗り越え方と実践ルールは「株の損切りルール|成長株投資で資金を守る実践的な方法」で詳しく解説しています。

 

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失敗するカップウィズハンドルの特徴(だまし回避)

全てのカップウィズハンドルがブレイク後に上昇するわけではありません。

「だまし」に引っかからないために、避けるべきパターンを整理します。

失敗パターン 理由
カップの深さが33%を大幅に超える 元の高値に戻るための上昇幅が大きすぎる。ブレイク後5〜15%で反落する傾向
カップの底がV字型 十分な振い落としが行われず、投機家が残っている。上昇力が弱い
取っ手がカップの下半分に形成 需要が不十分。買い手が高値を追う力がない
取っ手が10週移動平均線の下に位置 テクニカル的に弱い位置でのブレイクは信頼性が低い
取っ手が横ばいで下がらない 振い落としが不十分。ブレイク後に売り圧力が残る
ブレイク時に出来高が増加しない 機関投資家の買いが入っていない。だましの可能性が高い
ベース形成前に明確な上昇トレンドがない そもそもカップウィズハンドルの前提条件を満たしていない
市場全体が下落トレンド どんなに優れたパターンでも、市場環境が悪ければ機能しない

 

最後の「市場全体が下落トレンド」は非常に重要です。CAN-SLIMの「M」(Market Direction)の条件に該当し、ディストリビューションの頻発で判断できます。

ディストリビューション(売り抜け)について詳しく解説した記事はこちら

主要株価指数のディストリビューション状況を見る(無料・毎日更新)

 

カップウィズハンドルとVCPの違い

カップウィズハンドルと並んで成長株投資家に知られるチャートパターンに、ミネルヴィニのVCP(Volatility Contraction Pattern)があります。

両者は似た部分もありますが、構造と用途に違いがあります。

項目 カップウィズハンドル VCP
提唱者 ウィリアム・J・オニール マーク・ミネルヴィニ
形状 U字型のカップ + 小さな取っ手 ボラティリティが段階的に収縮する複数回の調整
調整回数 大きな調整1回(カップ)+ 小さな調整1回(取っ手) 2〜6回の連続した調整で振幅が縮小
形成期間 7〜65週間 数週間〜数ヶ月(カップウィズハンドルより短いことが多い)
重視する点 カップの深さ・形状・出来高パターン ボラティリティの収縮度合い
共通点 出来高を伴ったブレイクアウトがエントリーポイント 出来高を伴ったブレイクアウトがエントリーポイント

 

どちらのパターンも「売り圧力が枯渇した後のブレイクアウト」を捉えるという点では同じ思想に基づいています。

実際の投資では、両方のパターンを知っておくことでエントリーチャンスが広がります。

→ VCPについて詳しく解説した記事はこちら

 

カップウィズハンドル・VCPと並ぶもう1つの代表的なベースパターンが「ダブルボトム」です。

W字型に2つの底を形成するパターンで、条件やエントリー方法を詳しく解説しています。

 

日本株でカップウィズハンドルを効率的に探す方法

カップウィズハンドルの条件を理解したら、次の課題は「どうやって日本株の中から候補銘柄を見つけるか」です。

 

日本の上場銘柄は約4,000社あります。全銘柄のチャートを一つひとつ確認するのは現実的ではありません。

まず候補を絞り込み、その中からチャートを確認するというアプローチが効率的です。

 

カップウィズハンドルが形成される銘柄には共通する特徴があります。

それはCAN-SLIMの条件を満たしている可能性が高いということです。

業績が好調で、機関投資家の買いが入り、上昇トレンドの中で調整局面を迎えている、このような銘柄がカップウィズハンドルを形成します。

 

この特徴を利用して、以下のステップで候補を効率的に絞り込むことができます。

 

ステップ1:業績でフィルタリング

CAN-SLIMの「C」の条件(直近四半期のEPSと売上高が前年同期比20%以上増加)を満たす銘柄に候補を絞ります。

本サイトでは、この条件を満たす銘柄を「オニール銘柄」として自動スクリーニングし、無料で公開しています。

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ステップ2:上昇トレンドにある銘柄に絞る

カップウィズハンドルの前提条件は「ベース形成前に30%以上の上昇トレンドがある」ことです。

つまり、第2ステージ(上昇局面)にある銘柄が候補になります。

ミネルヴィニのトレンドテンプレートの条件を満たす銘柄は第2ステージにいる可能性が高く、ここでさらに候補を絞れます。

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ステップ3:チャートを確認する

ステップ1と2で絞り込んだ銘柄(両方の条件を満たす銘柄はさらに有力)のチャートを確認し、カップウィズハンドルの形状を探します。

出来高の推移にも注目し、底値圏での薄商いやブレイク時の出来高急増が見られるかをチェックします。

この「業績スクリーニング → テクニカルフィルタリング → チャート確認」の流れを習慣化することで、カップウィズハンドル銘柄を効率的に発見できるようになります。

さらに詳細なデータ(レラティブストレングス、年間EPS成長率、新高値ブレイク銘柄など)を活用すると、候補の精度をさらに高めることが可能です。

限定記事の詳細・提供データ一覧を見る

 

CAN-SLIMにおけるカップウィズハンドルの位置づけ

カップウィズハンドルは、CAN-SLIM投資法のテクニカル分析の中核です。

 

CAN-SLIMの7つの条件(C・A・N・S・L・I・M)はファンダメンタルと市場環境の分析が中心ですが、実際にエントリーするタイミングを決めるのはチャートパターンの分析です。

その中で最も代表的なパターンがカップウィズハンドルであり、CAN-SLIMの「N」(New Highs=正しいベースを抜けて新高値)の条件とも直結しています。

 

つまり、CAN-SLIMの実践プロセスは以下のようになります:

  1. C・A・N・S・L・Iの条件で業績・需給・市場でのポジションを確認
  2. M(市場の方向性)が良好であることを確認
  3. チャートでカップウィズハンドル等のパターンが形成されるのを待つ
  4. ピボットポイントを出来高を伴って突破した時点でエントリー

 

ファンダメンタルが優れていても、チャートパターンが形成されていなければエントリーしない。

逆に、チャートが美しくても業績が伴っていなければ見送る。

この二重フィルターがCAN-SLIMの核心であり、カップウィズハンドルはその最終判断材料にあたります。

→ CAN-SLIM投資法の7つの条件について詳しく解説した記事はこちら

 

よくある質問(FAQ)

Q. カップウィズハンドルは日足チャートと週足チャートのどちらで確認すべきですか?

基本的には週足チャートで全体の形状を確認し、日足チャートでピボットポイント付近の細かい動き(出来高の変化、取っ手の形成過程)を確認するのがおすすめです。

オニールも週足チャートと日足チャートの併用を推奨しています。

 

Q. 取っ手がないカップ型でもエントリーしてよいですか?

オニールは「取っ手なし型」も有効なパターンとして認めています。

ただし、取っ手がある場合に比べて最後の振い落としが不十分な可能性があるため、ブレイク時の出来高が十分に大きいことをより厳格に確認すべきです。

 

Q. カップウィズハンドルのブレイク後、どこで利益確定すべきですか?

オニールは、ピボットポイントから20〜25%上昇した時点で少なくとも一部を利益確定することを推奨しています。

ただし、ブレイク後1〜3週間で20%以上上昇した場合は「8週間ルール」が適用され、最低8週間は保有を続けるのが望ましいとされています。

 

Q. カップウィズハンドルとダブルボトムの違いは何ですか?

ダブルボトムは「W」字型に2つの底をつけるパターンです。

カップウィズハンドルとは形状が異なりますが、どちらも「売り圧力が枯渇した後のブレイクアウトを狙う」という点では同じ思想に基づいています。

オニールはダブルボトムもCAN-SLIMで有効なパターンとして紹介しています。

ダブルボトムの詳しい条件とエントリー方法はダブルボトムとは?で解説しています。

 

まとめ

カップウィズハンドルは、CAN-SLIM投資法におけるテクニカル分析の最重要パターンです。

カップの深さ(12〜33%)、形成期間(7〜65週間)、取っ手の位置(上半分かつ移動平均線の上)、そしてブレイク時の出来高増加、これらの条件を満たすパターンを見つけ、適切なピボットポイントでエントリーすることが成長株投資の成功確率を高めます。

 

ただし、チャートパターンだけでは不十分です。

CAN-SLIMの7つの条件でファンダメンタル面も確認し、市場全体の方向性が良好であることを合わせて判断することが重要です。

 

日本株でカップウィズハンドルの候補銘柄を効率的に探すには、まず業績と株価トレンドでスクリーニングをかけてから、絞り込んだ銘柄のチャートを確認するアプローチが有効です。

オニール銘柄一覧を見る(無料):CAN-SLIMの「C」条件でスクリーニングした銘柄

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CAN-SLIM投資法の7条件を詳しく解説した記事

 

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