本記事では、成長株投資法で著名なウィリアム・J・オニールの著書「オニールの成長株発掘法」で紹介されているCAN-SLIM投資法について解説します。
CAN-SLIM投資法の1番の特徴は、ファンダメンタル分析とテクニカル分析の両方を駆使することです。
業績だけでもチャートだけでも不十分です。どんなに業績が良い銘柄でもエントリーポイントを誤れば良い結果は得られませんし、業績を無視してチャートだけで判断するのもリスクが高いです。
双方を考慮して銘柄選定をしていくのがCAN-SLIM投資法です。
本記事では、オニールのCAN-SLIM投資法についてまとめるとともに、僕が本サイトで提供しているデータについてご紹介できればと思います。
CAN-SLIMのCの条件を満たす銘柄を自動でスクリーニングして管理しています。
CAN-SLIM投資法
「CAN-SLIM」は、銘柄選定で重要となる7項目の頭文字を取ったものです。
まずはそれぞれの頭文字が何を意味するのかをまとめていきます。
CAN-SLIM投資法
- Current Quarterly Earnings(当期四半期のEPSと売り上げ)
- Annual Earnings Increases(年間EPSの増加)
- Newer Companies, New Products, New Management, New Highs Off Properly Formed Bases(新興企業、新製品、新経営陣、正しい株価ベースを抜けて新高値)
- Supply and Demand(株式の需要と供給)
- Leader or Laggard(主要銘柄か、停滞銘柄か)
- Institutional Sponsorship(機関投資家による保有)
- Market Direction(株式市場の方向)の頭文字
それぞれ掘り下げていきます。
C(当期四半期のEPSと売り上げ)
CはCurrent Quarterly Earningsの頭文字で、当期四半期のEPSと売り上げを指します。
C = Current Quarterly Earnings
当期四半期のEPS(1株当たり利益)と売り上げ。EPSが上昇していること。少なくとも18〜20%、できれば40〜100%、あるいは200%以上が好ましい。上昇率は大きければ大きいほど良いが、さらに最近の四半期のどこかの時点で、加速度的に上昇していることが必須である。同様に、四半期売り上げも加速度的に上昇しているか、25%以上上昇しているべきである。
「オニールの成長株発掘法」より
上記の通り、当期四半期のEPSと売り上げが前年同期比に比べて大きく上昇していることがポイントです。
EPSだけでは不十分できちんと売上が伴っていることが重要になります。
加速度的に上昇しているとさらに良いです。
A(年間EPSの増加)
AはAnnual Earnings Increasesの頭文字で、年間EPSの増加を指します。
A = Annual Earnings Increases
年間の収益増加。過去3年間、毎年大きな収益増加(25%以上)を続け、ROE(株主資本利益率)は17%以上(理想は25〜50%)であること。ROEが低すぎる場合は、税引き前利益が高いことが必須である。
「オニールの成長株発掘法」より
上記の通り、四半期ベースのみではなく、年間ベースで成長していることも必須ポイントです。
ROEについては、日本企業だと17%はかなりハードルが高いので、少し引き下げても良いかもしれません。
N(新興企業、新製品、新経営陣、正しい株価ベースを抜けて新高値)
NはNewer Companies, New Products, New Management, New Highs Off Properly Formed Basesから来ていて、新興企業、新製品、新経営陣、正しい株価ベースを抜けて新高値を指します。
N = New Products, New Management, New Highs
新製品、新経営陣、新高値。新製品や新サービス、新経営陣、あるいは産業状況に見られた新たな変化などを探す。何よりも重要なのは、正しく形成されたベースから抜け出て新高値を付け始めた銘柄を買うことだ。
「オニールの成長株発掘法」より
業績が好調なことに合わせて、何かしらの強力な材料があると株価は大きく上昇します。
新製品や、新経営陣、新サービスなどがそれに該当します。
S(株式の需要と供給)
SはSupply and Demandの頭文字で、株式の需要と供給を指します。
S = Supply and Demand
株式の需要と供給(重要ポイントで株式の需要が高いこと)。現代のニューエコノミーにおいては、総資本の規模に制限はない。ただし、CAN-SLIMのすべてのルールに適合していることが必須条件である。適切に形成されたベースから抜け出るときに出来高が増加する銘柄を探すのだ。
「オニールの成長株発掘法」より
株式の需要と供給も重要です。
株価が上昇するには、大きな買い需要が必要です。
この買い需要が本当にあるのかどうかを見極めるには、出来高の動きを注視する必要があります。
ポイントとなる局面で出来高が増加していれば、成功確率が高まります。
L(主導銘柄か、停滞銘柄か)
LはLeader or Laggardの頭文字で、主要銘柄か、停滞銘柄かを指します。
L = Leader or Laggard
主導銘柄か、停滞銘柄か。マーケットを牽引する主導銘柄を買い、停滞銘柄は避けること。特定の分野や地域で首位を行く企業の株を買うのだ。ほとんどの主導株は、レラティブストレングス指数が80〜90以上、総合評価も強気相場なら90以上になる。
「オニールの成長株発掘法」より
主導銘柄にエントリーすることも重要です。
停滞銘柄でも少しは上昇する可能性はありますが、主導銘柄にはかないません。
主導銘柄かどうかを見極めるには、後述するレラティブストレングスが役立ちます。
I(機関投資家による保有)
LはInstitutional Sponsorshipの頭文字で、機関投資家による保有を指します。
I = Institutional Sponsorship
機関投資家による保有。機関投資家による買いが増加している銘柄を買うこと、そして少なくとも最近の投資成績がトップの投資信託マネージャー1〜2人が買っている銘柄を選ぶことである。さらに、経営陣が自社株を所有している企業を探すと良い。
「オニールの成長株発掘法」より
株価が大きく上昇するには大きな買いが必要になります。
この大きな買い需要には機関投資家のエントリーが必須です。
中でもここ最近の投資成績が良い機関投資家がエントリーした銘柄にエントリーできれば勝率はさらに上がります。
また経営陣が自社株を保有していると、株価の上昇は自分の利益に直結するので、株価上昇にコミットする可能性が高いです。
M(株式市場の方向)
LはMarket Directionの頭文字で、株式市場の方向を指します。
M = Market Direction
株式市場の方向。日々の平均株価と出来高の動き、および個々の主導銘柄の動きを正確に読み取り、マーケット全体の方向性を判断する方法を学ぶこと。これにより勝ち組に入れるか、それとも負け組で終わるのかが決まる。常にマーケットの動きを把握することが重要である。マーケットを知らずして利益を出すことはできない。
「オニールの成長株発掘法」より
どんなに業績の素晴らしい銘柄があってみ、どんなに完璧なタイミングでエントリーできても、マーケットの方向が悪いと大きな利益を出すことは難しくなります。
マーケットがどちらの方向に向かっているのかを見極める方法がわかると、勝率が上がります。
チャート読解術を身につける
次にテクニカル分析に焦点を当てます。
CAN-SLIM投資法では、ファンダメンタルのみではなく、チャートを読み解くテクニカル分析も重要になります。
チャートパターンでエントリーポイントを見極める
特にカップウィズハンドルに代表されるチャートパターンを見極める能力が非常に重要です。
実際に、「オニールの成長株発掘法」では、最初の100ページ以上がチャートで占められています。
ここで徹底的にチャート読解術のスキルを磨くことができるようになっています。
それくらいチャートを読み解く力は重要です。
下落のサインを見極める
また、投資で多くの利益を得るためには、マーケットが下落する前に資金を引き上げておく必要があります。
このマーケットが下落するサインについても言及されています。
それがディストリビューションです。
ディストリビューションが頻発すると、高確率でマーケットは下落に転じます。
損切り
どんなに素晴らしいタイミングでエントリーできたとしても、明確な損切りラインは必須です。
株式投資で継続的に勝ち続けるためには、攻めよりも自分の資金を正しく守ることも重要です。
オニールは、ピボットポイントから7〜8%下落したら損切りするように主張しています。
独自のプログラムを開発してデータを自動収集しています
ここまでで、「オニールの成長株発掘法」のCAN-SLIM投資法についてまとめました。
CAN-SLIM投資法は成長株投資にとても有効な手法ですが、チェックすべき項目がたくさんあるということ事実です。
業績(EPSや売上高、ROEなど)やチャート(カップウィズハンドルや市場動向など)をチェックしないといけないので、確認するデータ量としてはなかなか凄まじい量になります。
しかしながら、投資で成功するにはこれくらいたくさんのフィルターに通して銘柄を厳選する必要があるということでもあります。
ここで紹介したもの全てを毎日チェックするのは大変です。
本サイトでは、独自にプログラムを開発し、必要なデータを自動収集しています。
収集したデータをもとに銘柄のスクリーニングをしたり、チャートのシグナル検知などを自動で行っています。
これにより、情報収集による作業量を大幅に削減することができ、より多くの時間をチャート分析や銘柄分析に当てられるようになりました。
収集データの一部は本サイトで無料公開して、より詳細なデータは「note」で提供しています。
ここから本サイトで収集しているデータをいくつかご紹介します。
参照できるデータがないため、独自のロジックを使って自ら集計しているデータもあります。
決算と業績予想データ
TDNETやEDINETから、XBRLデータを収集しています。
対象としているのは、決算短信、業績予想修正、有価証券報告書、四半期報告書です。
ここでCAN-SLIM投資法で必要なEPSや売上高、ROEなどを収集することができます。
レラティブストレングス
レラティブストレングスについては、独自のものを毎日計算しています。
実際の計算方法は公開されていないので不明ですが、調べてみると結構信憑性が高そうな計算方法が見つかったので、これを日本株に適用して計算しています。
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【一部無料公開】日本株でレラティブストレングスを計算する
続きを見る
計算結果の一部(レラティブストレングスが95以上の銘柄)に関しては無料公開しています。
「note」では、さらに詳細なデータを提供しています。
大量保有報告書
大量保有報告書についてもEDINETよりXBRLデータを収集しています。
大量保有報告書を利用すれば、機関投資家の売買を追うことができます。
特に新規で買いが入っていれば、その機関投資家は中長期的にその銘柄の株価が上昇すると見込んでいることが確認できます。
こういった銘柄にエントリーできたら勝率は上がります。
こちらは現時点では本サイトで記事作成は行っていないのですが、今後は記事を作成するようにしようと思っています。
「note」では一部データを提供しています。
Cを参考にしてオニール銘柄を管理しています
また、CAN-SLIM投資法のC(Current Quarterly Earnings、当期四半期のEPSと売り上げ)を参考にしてオニール銘柄を管理しています。
直近の決算短信をTDNETから取得して、売上高とEPSを確認して、次の条件を満たした場合には「オニール銘柄」に登録しています。
オニール銘柄への登録条件
- 直近四半期決算のEPSと売り上げが前年同期比で20%以上増加している。
平日1時間ごとにTDNETから最新の決算短信を取得して売上高とEPSからオニール銘柄を更新します。
登録されている銘柄はこちらで管理しています。
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オニール銘柄
続きを見る
(おまけ)トレンドテンプレート
最後におまけとしてトレンドテンプレートをご紹介しておきます。
トレンドテンプレートは、オニールと並ぶ伝説的な成長株投資家であるマーク・ミネルヴィニによって提案された手法です。
「ミネルヴィニの成長株投資法」で紹介されています。
これを使うと株価が上昇局面にいる銘柄をスクリーニングすることができます。
株価には4つのサイクルがあり、我々が投資すべきステージは第2ステージの上昇局面です。
トレンドテンプレートを使えば、第2ステージの上昇局面にいる可能性の高い銘柄をあぶりだすことができます。
本サイトでは、このトレンドテンプレートを日本株に適用して毎週土曜日に更新しています。
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【無料公開】ミネルヴィニのトレンドテンプレートを日本株に適用する
続きを見る
トレンドテンプレートの条件を満たした銘柄は「ミネルヴィニ銘柄」として全て無料公開しています。
このデータを組み合わせると、さらに投資精度を高めることができるので是非ともご活用ください。
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ミネルヴィニ銘柄
続きを見る
noteではより詳細なデータを提供しています
「note」では、様々なデータを組み合わせた、より詳細なデータを提供しています。
誰でもスクリーニングできるようにEXCEL形式でデータをまとめたり、業績やチャートをPDFファイルにまとめて提供しているものなどがあります。
もしご興味があればご覧ください。
まとめ
本記事では「オニールの成長株発掘法のCAN-SLIM投資法」についてまとめました。
投資で成功するには、ここで紹介したような様々なデータを確認して銘柄を厳選し、さらにチャートを駆使して適切なエントリータイミングで買うことが重要になります。
さらに日々のマーケットの動きを確認して、下落に転じそうな場合には資金を守る必要もあります。
投資で圧倒的な成功を収めるためには多くの努力が必要になります。
これらの情報をすべて考慮することはとても大変です。
しかし、プログラムなどでデータをある程度自動収集・管理することができればかなり効率的なこれらの銘柄選定作業を行うことが可能です。
僕はプログラミングのスキルを活用して、銘柄選定のプロセスを自動化して効率的に投資で利益を上げることを目標にしています。
実際に僕が銘柄選定で使うデータについては「note」で提供しています。(主にPDFファイルでまとめた日次・週次レポートを見て銘柄選定をしています)
もしご興味があればご覧ください。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。