PER(株価収益率)は「人気投票」だと言われることがあります。
たしかに投資家の注目度や雰囲気で上下する面はありますが、それだけで片づけると誤解が残ります。
PERが動く背景には、もっと理屈のある要因があり、特に 期待(成長率)/金利(割引率)/リスク(不確実性) の3つが大きく効きます。
この記事では、PERが上がる理由・下がる理由をこの3軸で整理し、よく聞く「金利上昇でPERが下がる」の腹落ちまでつなげます。
あわせて、PER拡大/PER縮小(バリュエーション調整) を実務でどう扱うかもチェックリスト化します。
※PERの定義そのものは「PERとは?」で、株価の全体像は「株価は「PER × EPS」で決まる」で解説しています。この記事は“深掘り版”です。
結論:PERは期待の温度計。主な変動要因は3つ
PERを動かす中心となるのは、次の3つです。
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成長期待(成長率):将来どれだけ利益が伸びると市場が見ているか
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金利(割引率):将来の利益を「今の価値」に直すときの割引の強さ
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リスク認識(リスクプレミアム):不確実性が増えた/減った、という市場の評価
補足として、短期では 需給(資金流入・注目度) でもPERは動きます。
「金利が上がると割引率が上がり、PERは低下しやすい」という整理は、SBI証券の解説でも説明されています。(SBI証券)
また、東証マネ部!では バリュエーション調整=PERの低下 と捉えたうえで、期待成長率の低下や成長鈍化リスクが高まったと市場が感じるときに起きやすい、という整理がされています。(東証マネ部!)
まず前提:株価=PER×EPSで株価変動を分解する
PER=株価÷EPS(評価倍率)
PERはシンプルに言うと「利益(EPS)に対して市場が何倍まで払うか」という倍率です。
定義やPERの高い/低いの一般的な見方は、既存の「PERとは?」で復習しておくとスムーズです。
PERが動く=市場が「同じ利益に何倍払うか」を変えた
ここが重要です。
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EPSが一定でも、PERが10倍→15倍になれば株価は1.5倍になります
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逆にPERが15倍→10倍に下がれば、EPSが伸びても株価が伸びない(あるいは下がる)ことがあります
ただし、長期で見ると株価を押し上げる土台はEPSになりやすいです。
この全体像は「株価は「PER × EPS」で決まる」で整理しています。
また、EPSの見方(希薄化・特別利益・成長の質)は「EPSとは?」で深掘りできます。
PERが上がる理由(PER拡大=バリュエーション拡大)
理由① 成長率の期待が上がる(伸びる確度が上がる)
PERが上がる王道はこれです。
市場が「将来の利益成長がより確からしい」と見たとき、同じEPSでも高い倍率がつきやすくなります。
代表例:
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上方修正、ガイダンス強化
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受注・契約の積み上がり(継続課金など)
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成長の加速(前年同期比の伸びが強まる)
成長株でPERが乗りやすいのは、まさに「成長期待(成長率)」がPERに反映されるからです。
理由② リスクが下がる(不確実性が減る)
PERは期待だけでなく安心でも上がります。
たとえば、同じ成長率でも「読める利益」になった瞬間にPERが上がることがあります。
例:
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収益の安定化(継続課金比率の上昇など)
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競争優位の確立(解約率が低い、乗り換えコストが高い、ブランドが強い)
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事業ポートフォリオが安定(特定顧客依存が薄れる等)
「不確実性が減った=要求リターンが下がる」方向に働き、PER拡大につながりやすいです。
理由③ 金利低下・金融緩和局面(割引率が下がる)
金利は「将来のお金を現在価値に割り引く」役割を持つため、金利低下は(理屈上)PERを押し上げる方向に働きます。
逆に「金利が上昇すると割引率が上昇し、PERは低下しやすい」という関係はSBI証券でも説明されています。(SBI証券)
(※現実の相場は金利と景気が同時に動くので、金利だけで決まるわけではありません。後述します)
理由④ 資金流入・注目度上昇(需給)
PER拡大は、需給で加速することがあります。
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機関投資家の買いが入る
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指数採用で継続的な買い需要が発生する
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セクターがテーマ化して資金流入が起きる
ここは理屈より現象として押さえると便利です。
「なぜPERが上がっているのか」を説明するとき、成長期待/金利/リスクで説明できないなら、需給(短期資金)を疑う視点が役に立ちます。
PERが下がる理由(PER縮小=バリュエーション調整)
理由① 成長率の期待が下がる(伸びが鈍る兆候)
PER縮小の典型は「期待が剥落した」状態です。
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市場期待に届かない(良決算でも期待未達)
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成長率が鈍化(加速が止まる)
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競争激化、単価下落、需要鈍化
東証マネ部!でも、バリュエーション調整(PER低下)は 市場が期待する利益成長率の低下 や 利益成長の鈍化リスクが高まったと感じた時 に起きやすい、という整理がされています。(東証マネ部!)
理由② 金利上昇(割引率上昇)でPERレンジが下がる
「金利上昇でPERが下がる」とよく言われるのは、割引率が上がることで将来利益の現在価値が下がり、結果として評価倍率(PER)も下がりやすい、という考え方です。(SBI証券)
特に、将来の成長を大きく織り込んでいる成長株は、割引率の変化に敏感になりやすい(=PERの振れが大きくなりやすい)点が実務上のポイントです。
※一方で「金利が上がったから必ずPERが下がる」と単純化しすぎるのも危険です。金利は景気・成長率・リスクとも絡むため、金利だけを原因にしない視点も持っておくと判断が安定します。
理由③ リスクが上がる(リスクプレミアム上昇)
PERは割引率を反映し、割引率には(市場利子率だけでなく)リスクプレミアムの要素も含まれ得ます。(内閣府ホームページ)
つまり、金利が大きく動いていなくても「不確実性が増えた」と市場が感じれば、PERが下がることがあります。
例:
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規制リスク、訴訟、事故、不祥事
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地政学リスク
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競争環境の急変(代替技術の台頭など)
東証マネ部!でも、PER低下は「成長率の期待低下」や「成長鈍化リスクが高まったと感じる」ことが主因になり得る、と述べています。(東証マネ部!)
金利だけじゃないという感覚をここで持てると、PER縮小局面の理解が一段深まります。
危険:EPSも落ちてPERも縮む二重苦
株価=PER×EPSなので、
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EPS↓(業績悪化)
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PER↓(評価の切り下げ)
が同時に起きると、下落が大きくなりやすいです。
この局面は「土台もダメ、追い風も逆風」になっているため、回復に時間がかかることがあります。
ケース別で理解する(読者が一番腹落ちするパート)
PERの話は抽象になりやすいので、最後は2×2(EPS(実力)× PER(評価))で整理すると分かりやすくなります。
ケースA:EPS↑ × PER↑(理想の上昇)
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業績が伸びる
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市場の期待も高まる
→ 株価上昇が加速しやすい(両取り)
理想的なパターンです。
こういう銘柄に投資できれば大きな利益が期待できます。
ケースB:EPS↑ × PER↓(業績は良いのに株価が伸びない)
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EPSは伸びている
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しかし評価(PER)が縮む(バリュエーション調整)
→ 「EPSが増えても株価が上がらない」典型
このケースは、金利上昇・地合い悪化・期待未達などで起きます。
EPSは伸びているように見えても、その中身次第では一概にはいいとは言えません。詳細については「EPSとは?」でまとめています。
ケースC:EPS→ × PER↑(期待先行=不安定)
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業績が伴っていないのに、評価だけ上がる
→ 崩れるときはPERが逆回転しやすい(注意ゾーン)
ケースD:EPS↓ × PER↓(最悪の局面)
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業績悪化+評価下落
→ 下げが大きくなりやすい
ここまで読んだら、「株価は「PER × EPS」で決まる」で株価変動の分解をもう一度確認すると理解が固まります。
実務で使えるチェックリスト(PERが動いた時の確認順)
PERが急に動いたとき、判断を安定させるには「順番」が大事です。
おすすめはこの順です。
① EPS(実績/予想)は変わった?
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コンセンサスが上がった?下がった?
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特別利益でブレていない?
(→詳しくは「EPSとは?」へ)
② ガイダンス/上方修正は?
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確度が上がったのか(PER拡大の根拠)
- 期待未達なのか(PER縮小の根拠)
③ 金利・金融政策(特に長期金利)は?
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割引率の変化でPERレンジが動いていないか
(SBI証券の「割引率とPER」整理は一読価値あり)
④ セクター資金(グロース→バリューのローテ等)は?
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個別ではなく市場全体の気分でPERが動くことがある
⑤ 企業固有のリスクは増えた?
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規制、事故、不祥事、競争環境の変化
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「成長鈍化リスクが高まった」と市場が感じていないか(=PER縮小要因)(東証マネ部!)
(※PERの基礎(高い/低いの解釈)は「PERとは?」へ)
成長株投資(CAN SLIM / VCP)との接続
オニール:PERより成長の加速(C/A)が先、PERは後から付く
CAN SLIMは「直近四半期(C)」「年次の継続成長(A)」を重視します。
PERは目的というより結果としてついてくる、という感覚が近いです。
本サイトで管理している「オニール銘柄」はこのC(Current earnings)を利用しています。
ミネルヴィニ:高PERは許容、ただしEPSが伴うことが前提
VCPは需給とトレンドを重視しますが、形だけで飛びつくと ケースC(期待先行) に入りがちです。
だからこそ、EPS成長でフィルタしてからテクニカルでタイミングを取る、が王道になります。
「ミネルヴィニ銘柄」は、ミネルヴィニの投資手法を参考に、トレンドテンプレートを利用して第2ステージにいる株価をスクリーニングしています。
まとめ:PER変動は「成長率×金利×リスク」で説明できる
ここまでの内容をまとめると次のようになります。
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PERは期待の温度計。主因は 成長期待/金利(割引率)/リスク認識
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PER単体で割安・割高を決めない(EPSとセット)
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なぜPERが動いたかを言語化できると、売買ミスが減る
合わせて読みたい記事
「EPSとは?」
「PERとは?」
FAQ
金利が上がるとPERは必ず下がる?
必ずではありません。
割引率の観点では「金利上昇→割引率上昇→PER低下」が説明されますが(SBI証券)、金利上昇が「景気の強さ」や「企業利益の増加」と同時に起きる局面では、EPS側が強くなって株価が保たれることもあります。
要は PERだけでなくEPSもセットで見るのが実務的です。
成長株のPERが急落するのはなぜ?(期待未達/リスク増/金利)
多くは「期待に届かなかった」「成長の確度が下がった」「不確実性が増えた」と市場が判断したときです。
東証マネ部!も、PER低下は期待成長率の低下や成長鈍化リスクの上昇で起き得ると整理しています。(東証マネ部!)
PER拡大はいつまで続く?
PER拡大が続く条件は「成長期待の更新」「リスクの低下」「資金流入が継続」などです。
逆に、期待が飽和してこれ以上の上振れがなくなると、PERは頭打ちになりやすいです。
PERの適正水準はどう考える?(同業比較・過去レンジ・成長率)
原則は 同業比較+過去レンジ+成長率との整合です。
PERは市場環境(特に金利・リスク選好)でレンジが動くので、「何倍が絶対」よりも「なぜその水準が許容されているか」を説明できることが大切です。
EPSが良いのに株価が弱いのはなぜ?(PER縮小)
典型は ケースB:EPS↑ × PER↓。
業績は良いが、評価が切り下がる(バリュエーション調整)と株価は伸びません。
原因は期待未達、金利上昇、リスク増など。(東証マネ部!)