株式投資で頻繁に出てくる「PER(株価収益率)」は、その株がどれくらい期待されているかを読み解くための代表的な指標です。
ただしPERは、市場の心理や金利、資金の流れで大きく動くため、PERだけで割安・割高を決め打ちすると危険です。
この記事では、PERの基本(意味・計算式)から、PERが高い/低いの解釈、PERが上がる理由・下がる理由(バリュエーション拡大/調整)、そして「EPSが伸びないのにPERだけ上がる危険地帯」まで解説します。
株価の全体像は「株価=PER×EPS」で整理できますので、「株価は「PER × EPS」で決まる:EPS成長が主役、PER拡大は追い風」もあわせて読むと理解が深まります。
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株価は「PER × EPS」で決まる:EPS成長が主役、PER拡大は追い風
結論:PERは「市場の期待(評価)」を数値化したもの。だから動きが大きい
PERは次の式で計算されます。
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PER=株価÷EPS(利益に対する評価倍率)
PERが動くということは、市場がその企業の将来性やリスクをどう見ているか(=評価)が変わったということです。
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PERが上がる=期待が増える/リスクが下がる
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PERが下がる=期待が剥落する/金利や地合いの影響も
ここで重要なのは、PERは「便利だけど不安定」な指標だという点です。
PER単体で判断すると、期待先行の銘柄に飛びついたり、逆に成長株を「高PERだから」と避けてチャンスを逃したりしがちです。
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PERは便利だが単体で決め打ちすると危険(EPSとセットで見る)
PERとは?基本を最短で理解する
PER(Price Earnings Ratio)=株価 ÷ EPS
PERは「株価が利益(EPS)の何倍まで買われているか」を示します。
ざっくり言えば、
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利益の何年分で買われているか
というイメージが近いです。
例えば、EPSが100円で株価が2,000円なら、PERは20倍です。
「この会社は、1株利益100円に対して20倍の評価で買われている」と読み取れます。
注意点として、PERはEPSを使うため、
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利益が不安定な会社(景気敏感・赤字転落が多いなど)
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一時的な特別損益でEPSが大きく変わる会社
ではPER自体がブレやすくなります。
株価=PER×EPS とセットで理解する
株価は次の式で分解できます。
株価 = PER × EPS
この視点があるだけで、「株価が上がった理由」を説明しやすくなります。
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株価上昇は「EPS要因(業績)」と「PER要因(評価)」に分解できる
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PERは市場側の要因
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EPSは企業側の要因
つまり、PERを理解することは「市場の期待がどう変化しているか」を読むことです。
EPSの基本は別記事で詳しくまとめています。
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EPSとは?意味・計算式・見方をわかりやすく解説(成長株投資での使い方も)
PERが高い/低いは何を意味する?
PERが高い=期待が高い(成長率・将来性・安定性)
PERが高い銘柄は、市場から以下のように評価されていることが多いです。
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成長率が高い(今後利益が伸びそう)
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将来性がある(新市場・新製品など)
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安定している(業績のブレが小さい、競争優位が強い)
特に成長株は、将来の利益成長を織り込むため 高PERになりやすいです。
だから「PERが高い=即ダメ」ではありません。
ただし、注意点もあります。
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「期待先行」になっていないか
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EPS成長で正当化できるPERか
ここが判断の分かれ目です。
高PERでも伸びる株は伸びますが、期待が剥落すると下げも大きくなりやすいです。
PERが低い=割安とは限らない(疑いがある・構造不安)
PERが低い株は割安に見えますが、実際には「安い理由」があることも多いです。
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成長鈍化の懸念
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ビジネスの不確実性(競争激化、規制、技術変化)
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業界逆風(構造不況、需要減)
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利益のピークアウト(今が一番良い可能性)
PERが低いときほど、
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安い理由の確認が必須
です。「なぜ市場は安く見積もっているのか?」に答えられない状態で買うのは危険になります。
目安はある?→「業種・局面で違う」が答え
PERの何倍が適正かは、結論として 業種・局面で変わります。
基本は次の3つで判断します。
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同業比較(同じビジネスモデル同士で比べる)
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過去レンジ(その銘柄が歴史的にどのレンジで評価されやすいか)
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成長率との整合(利益成長が高いほど高PERが許容されやすい)
さらに、金利や相場環境によって市場全体のPERレンジが変わることも重要です。
特に金利が上がる局面では、将来の利益を重く見積もりにくくなり、グロース全体のPERが下がりやすくなります。
PERが上がる理由(PER拡大=バリュエーション拡大)
PER拡大は「評価が切り上がる」ことです。
株価がEPS以上に伸びるとき、ここが起点になっていることがよくあります。
PERが上がる4つの典型要因
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成長の確度が上がる(決算・上方修正・ガイダンス強化)
→ 伸びるが確信に近づくと評価が上がる -
ビジネスモデルが再評価される(ストーリーが伝わる)
→ 市場が理解し、買える理由が明確になる -
セクター追い風(テーマ化・資金流入)
→ 業界全体に資金が入り、評価レンジが上がる -
需給が改善する(機関投資家の買い、指数採用など)
→ 買い手が増え、株価が上がりやすくなる
PER拡大は空気で起きることもありますが、強い局面は多くの場合、どこかに数字の裏付け(決算・ガイダンス・シェア拡大)がついてきます。
PER拡大が起きやすい兆候
PER拡大は、チャートと需給にも表れやすいです。
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高値更新+出来高増(注目が集まる)
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同業比較での再評価(割安な成長株発見)
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市場の見方が変わったタイミング(転換点)
例:赤字→黒字、成長鈍化→再加速、新規事業が立ち上がる など
「なぜ今、評価が変わるのか?」を説明できる銘柄ほど、PER拡大が持続しやすい傾向があります。
PERが下がる理由(PER縮小=バリュエーション調整)
PER縮小は「評価が切り下がる」ことです。
成長株投資で最もダメージが出やすいのがこの局面です。
PER縮小の典型パターン
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市場期待に届かない(成長率の鈍化・伸び悩み)
→ 良い決算でも市場期待が高すぎるとPERが下がることがある -
金利上昇や地合い悪化でグロース全体が売られる
→ 個別要因ではなく、相場全体でPERレンジが下がる -
不確実性が増える(競争激化・規制・事故・不祥事)
→ リスクが上がると評価倍率が下がりやすい
ここで厄介なのは、EPSが伸びていてもPER縮小で株価が伸びない(あるいは下がる)ことが普通に起きる点です。
危険なのは「EPSも落ちてPERも縮む」二重苦
株価=PER×EPSなので、
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EPSが下がる(業績悪化)
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PERも下がる(評価の切り下げ)
が同時に起きると下落が大きくなりやすいです。
これは「業績もダメ、期待もダメ」という状態なので、反転まで時間がかかるケースもあります。
危険地帯:EPSが伸びないのにPERだけ上がる株
なぜ起きる?(短期資金・テーマ・期待先行)
EPSが伸びていないのに株価が上がるとき、起きているのは主にPER上昇です。
その背景は次のようなものが多いです。
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材料先行(ニュース、テーマ、思惑)
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短期資金の集中(人気化、踏み上げ)
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将来すごいへの期待だけが先行
ここでの分かれ目は、
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説明できる期待なのか
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雰囲気の期待なのか
です。
前者なら投資の土台になり得ますが、後者は崩れるのも早いです。
見抜くチェックポイント(仕手っぽさの検出)
EPSが伴わないPER上昇は、次の特徴が重なるほど危険度が上がります。
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決算が弱いのに高値更新
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値幅が荒い&出来高急増(ボラ急上昇)
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IRが抽象的、数字が少ない
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将来の話ばかりで足元の改善がない
もちろん、これに当てはまっても上がり続ける銘柄はあります。
ただ「いつでも逆回転する」可能性が高く、長期投資の土台にするには慎重に見たい領域です。
成長株投資でのPERの扱い方
基本:PERは目的じゃなく結果。EPS成長を先に見る
PERは「市場がどう評価しているか」の結果であり、企業が直接コントロールできるものではありません。
だからこそ実務では、
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EPS成長が土台、PER拡大は追い風
と捉えるのが安定します。
高PERでも、EPS成長が強く、成長の再現性が高ければ許容されることがあります。逆に、EPSが弱いのにPERだけ高い銘柄は崩れやすい。
EPSの見方は別記事で詳しく解説しています。
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EPSとは?意味・計算式・見方をわかりやすく解説(成長株投資での使い方も)
実務テンプレ(選び方)
成長株で「PERの罠」を避けつつ狙うなら、次の3ステップが分かりやすいです。
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EPSが伸びている銘柄を候補にする
→ まず土台(企業の実力)でふるいにかける -
市場の評価が変わり始めた兆候(高値更新・上方修正)を見る
→ PER拡大が起きやすい局面を拾う -
期待先行ではなく数字が伴っているかでフィルタ
→ 「説明できる期待」かどうかを確認する
この流れは、「株価=PER×EPS」の考え方とも一致します。
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株価は「PER × EPS」で決まる:EPS成長が主役、PER拡大は追い風
オニール(CAN SLIM)とPER:PERより“成長の加速”を重視
オニール流では、PERそのものより 成長(特にEPS成長)を重視します。
その結果としてPERが付いてくる、という考え方です。
C/Aが強いとPERは後から付いてくる
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C(Current earnings):直近四半期のEPS成長
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A(Annual earnings):年次の継続成長
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N(New):新製品・新市場で期待が生まれやすい
CとAが強いと市場が反応しやすく、結果としてPERが拡大しやすい。
「PERはあとからついてくる」という感覚が、成長株投資ではかなり本質に近いです。
本サイトで管理している「オニール銘柄」はこのC(Current earnings)を利用しています。
ミネルヴィニ(VCP)とPER:高PERを恐れないが中身(EPS)は必須
ミネルヴィニは高PERを理由に成長株を避けるよりも、勝ちやすい局面(需給・形)を重視します。
ただし前提としてファンダ(EPS成長)が必要です。
ファンダ(EPS成長)+VCP(需給)で勝ちやすい局面を狙う
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形だけで選ばない
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ブレイクはPER拡大の起点になりやすい
→ 注目が集まる瞬間は評価が乗りやすい
VCPの形が良くても、EPSが弱いなら「期待先行」のリスクが高まります。
だからこそ、EPSでフィルタしてからテクニカルでタイミングを取る、という運用が相性が良いです。
第2ステージにいる銘柄に投資する
ミネルヴィニは株価は4つのステージに分けられると言っています。
- 第1ステージ:底固め局面 無関心
- 第2ステージ:上昇局面 機関投資家の買い集め
- 第3ステージ:天井圏 機関投資家の売り抜け
- 第4ステージ:下落局面 投げ売り
投資するべきは第2ステージです。
そしてこの第2ステージにいる銘柄を特定するために、トレンドテンプレートというスクリーニング条件が提唱されています。
本サイトで管理している「ミネルヴィニ銘柄」は、このトレンドテンプレートを利用しています。
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【無料公開】ミネルヴィニのトレンドテンプレートを日本株に適用する
まとめ:PERは「期待の温度計」。EPSとセットで“上がる理由”を説明できるか
PERは市場の期待(評価)を数値化した温度計です。
便利ですが、単体で判断すると危険です。
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PER単体で割安/割高を決めない
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PER拡大の根拠(数字)を確認
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PERだけ上がる株は危険
次のアクションとしては、PERとセットになるEPSの理解も重要です。
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EPSとは:PER単体では見えない土台を確認するため
合わせて読みたい記事
「EPSとは?」
FAQ
PERが高い株は買ってはいけない?
いいえ、一概には言えません。成長株は将来の利益成長を織り込むため高PERになりやすいです。
重要なのは、EPS成長でそのPERが正当化できるか、そして成長の再現性があるかです。
PERが低いのに買われないのはなぜ?
多くの場合「安い理由」があります。
成長鈍化、業界逆風、構造不安、利益ピークアウトなどの疑いがあると、市場は低PERのまま放置することがあります。
割安=買いではなく、なぜ割安なのかを説明できるかが鍵です。
PERは赤字だとどうなる?(マイナスPERの扱い)
EPSがマイナス(赤字)だとPERも通常の解釈が難しくなります。
マイナスPERは比較指標として機能しにくいため、赤字企業を見る場合は、売上成長や利益改善の見通し、キャッシュフローなど別の観点が重要になります。
PERの目安は何倍?業種で違う?
業種で違います。成長率、利益の安定性、資本効率などで許容されるPERレンジが変わります。
基本は 同業比較+過去レンジ+成長率との整合で判断します。
加えて金利や地合いで市場全体のPERも変動します。
PERが急に下がったのはなぜ?(バリュエーション調整)
市場期待に届かなかった、成長率が鈍化した、金利上昇でグロース全体が売られた、不確実性が増えた…などが典型です。
EPSが伸びていてもPERが縮むと株価が伸びないことがあります。
PERとPBR、PSRの違いは?
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PER:利益(EPS)に対する評価
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PBR:純資産(BPS)に対する評価
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PSR:売上(1株売上)に対する評価
利益が安定している企業ではPERが使いやすく、赤字や利益がブレる企業ではPSRなどを併用することがあります。